手術時に神経を傷つけると麻痺が残ることも
虫歯や歯周病、不慮の事故などによって不幸にも歯を失ってしまった場合、インプラント治療を受けることで歯がもつ「かむ機能」と「歯の見た目」を取り戻すことができます。インプラントとはフィクスチャーと呼ばれるネジのような形をしたインプラント体を治療を受ける患者さんのあごの骨に直接埋め入れる治療です。インプラントは言わば「人工歯根を作る治療」とも表現できます。インプラントは埋め入れたフィクスチャーとあごの骨がオッセオインテグレーションという現象によって強固に結合するため、非常に安定性が高いのが特徴です。安定性が高く見た目も自然でメリットの多いインプラントですが、インプラントは外科的手術を行うという性質上、手術中のトラブルが発生する可能性があります。手術中におきるトラブルとしてはあごの骨の中を走る神経を傷つけてしまうことによる治療後の麻痺です。下唇の粘膜や皮膚などに麻痺がでてしまう可能性があるため、手術前には細心の注意を払い、事前のシミュレーションを行っておく必要があります。
3次元の画像で神経や血管の位置を確認
インプラント手術時に神経を傷つけると麻痺が残る可能性があるほか、あごの骨の中を通っている血管を傷つけてしまうと手術中に思わぬ大きな出血をひきおこすことがあります。このような手術時のトラブルを防ぐには治療前に行うシミュレーションが欠かせません。シミュレーションではCTを用いてあごの骨の形状や神経、血管の走り方を立体的に確認することで手術時におきるトラブルを予防できる確率が高まります。従来のレントゲンは2次元、つまり平面的な情報しか得られなかったため、3次元的な情報が分からずに手術を行い、神経や血管を傷つけてしまうケースがありました。
下歯槽神経の位置をしっかり把握しておく
インプラント手術をする前の検査では、CTを使って下あごの骨の中を通っている下歯槽神経(かしそうしんけい)の位置をしっかり把握しておくことが重要です。下歯槽神経は傷つけると下唇や皮膚、粘膜の感覚に麻痺がでることもあるため、治療前のシミュレーションでは下歯槽神経(オトガイ神経)の位置に特に注意を払っておくことが大切です。麻痺や出血、と聞くとどうしても「怖い」「危険」というイメージをもたれやすいのですが、どんな手術でも100%成功する、という保証はありません。大事なのはインプラント治療を受けるときには治療実績が豊富でCTをはじめとする設備や器具がきちんとととのっている医療機関を選ぶ、という点です。